先日、古い建物をゆっくり見る機会がありました。
建物を見るとき、自分たちは全体だけを見ることはあまりありません。
まずは少し離れたところから、建物全体を見る。
形やバランス。
屋根の重なり。
素材の組み合わせ。
建物がその場所にどう建っていて、周りにどんな雰囲気をつくっているのか。
そして近づいていくと、今度は細かなところが気になってきます。
遠くから見て、近くから見る。

【建物全体】
遠くから見ると、まず目に入るのは建物そのものの存在感。
屋根の形や外壁、窓、柱、バルコニー。
いろいろな要素が組み合わさって、一つの建物になっています。
古い建物には、今の建物とは少し違う重さや密度があります。
装飾も多いし、つくるのに相当な手間がかかっていることも分かります。

【外部手すりの細部】
近づいて見ると、全体写真では気づかなかったところが見えてきます。
例えば、この手すり。
遠くから見れば建物の一部ですが、近くで見ると、木を一本ずつ組みながら模様をつくっています。
角度。
太さ。
接合の仕方。
塗装の傷み方。
こういうところを見ると、
「どうやってつくったんだろう」
と考えてしまいます。
そして時間が経ったことで、つくった当時にはなかった表情も出ています。
何十年使われても、残っているもの。
建物の面白さは、完成した瞬間だけでは分からないところにもあります。
新品のときは、すべてがきれいです。
でも建物は、その状態のままではありません。
雨に当たり。
日に焼け。
人が触り。
修理され。
少しずつ変わっていきます。
その中で、どんな材料がどう残っているのか。
どんなつくり方をした部分が、今も使われているのか。
古い建物を見ると、その答えを実物で見ることができます。
手洗いも、全体から。

【手洗い全体】
建物の中にあった手洗い。
これも、まず全体を見ると面白い。
長い手洗い場に、同じ間隔で並んだ蛇口。
その上には鏡。
タイル、石、金物。
それぞれは単純な材料ですが、全部が組み合わさると、その場所独特の雰囲気になります。
新しい設備にはない、少し無骨な感じもあります。
そして、蛇口ひとつを見る。

【蛇口の細部】
近づいてみると、この蛇口。
形もシンプルで、かなり年季が入っています。
表面は新品のようにきれいではありません。
でも、それが悪いとも感じません。
何年も使われてきたことが、そのまま表面に残っています。
こういうものを見ると、
「古くなった=交換」
だけではないなと思います。
もちろん、水漏れしたり安全に使えなくなったりすれば直す必要があります。
でも、まだ役割を果たしているものなら、手を入れながら残すという選択もあります。
全体と細部。その両方を見る。
建物を見るときは、
全体と細部を見ます。
全体は、その建物が周りに与えている影響を見る。
大きさ。
佇まい。
街との関係。
人がどう近づき、どう使うのか。
細部は、
どのようにつくられているのか。
材料は何か。
どう組まれているか。
どこが傷んでいるか。
何十年という時間の中で、どう変化してきたか。
そういうところを見ます。
昔の建物を見ることは、昔を懐かしむことだけではない。
古い建物を見ると、
「昔はすごかった」
で終わりそうになります。
でも自分たちにとっては、それだけではありません。
今の仕事に持ち帰れることが結構あります。
どんな材料が長く残ったのか。
どんな納まりが今も機能しているのか。
逆に、どこが傷みやすかったのか。
そして、
なぜこの形にしたのか。
なぜここまで手間をかけたのか。
そんなことを考えながら見ています。
先人たちのチャレンジや工夫を、そのまま真似することはできません。
時代も材料も、暮らし方も違います。
でも、
そのときの人たちが何を考え、どうつくったのかを知ることはできる。
そこから、今の自分たちなりの形に変えていく。
それも建築の面白いところだと思います。
暮らし家も、
建物全体を見ること。
そして、細かなところまで見ること。
その両方を大切にしながら、これからの仕事につなげていきたいと思います。